兄が話したのはちっちゃな迷宮だと言えました。

 昔話だ。小学校の頃ですからとっくだ。
 ある日あたしに、二才上の兄が言いました。どっかいぶかしそうな外見だ。
「きのうは授業が終わってどこに行った?」
何かを確かめたいみたいでした。あたしはどこにも行かずにたちまち家に帰ったので、そう兄に話しました。すると兄はこう言ったのです。
「S氏が4拍子ごろお前をターミナルの正面で見たと言ったよ。するとそばにいたM氏が、おんなじ時間に中学生の傍らでお前を見たと言ったよ。おろおろしたんじゃないの?」
「たちまちアパートに帰ったって言ったじゃない」
「そうよな。それにターミナルと中学生じゃ遠すぎるし」
 あたしはだんだん、実に感情悪くなってきました。兄がまた言いました。
「今や一人Y氏も言ったんだ。同じ頃にお前がため池の傍らを歩いていたって」
 それを聞いて気持ちが悪いのを通り越して、不安になってきました。依然としてあたしは小6でしたが、何かで読んだことがあったのです。似たような話を。ひとつのホラーだと思いました。またそんな話を聞いたらいかんせんと思いましたが、たまたまこういう1回限りでした。ミュゼ 足